ミュージシャンの社会保険|個人事業主の社会保険は会社員と違うの?
社会保険という言葉を聞いたことがありますか?
聞いたことはあっても実態を理解している人は少ないのではないでしょうか?
社会保険がどのように個人事業主に関わっているのかを知るためにも社会保険とはなんなのか?というところから説明します。
- 社会保険とは?
- ミュージシャンが加入する必要がある社会保険
- ミュージシャンが任意で加入できる労災保険
- ミュージシャンが選べる国民健康保険
- 支払いができない場合の対応策
- 社会保険の加入は私たちにとって得か?
日本は国民皆保険になっていて、世界的にみても珍しくとても恵まれた環境です。
でも、生活がきつくて社会保険料を払うのは大変
国民年金の支払額は毎年上がっているし、受け取り年齢も引き上げられていて支払った分ちゃんと受け取れるのか心配
このように支払いをするのをためらっている人がいたらこの記事で解決できますのでぜひ最後まで読んでください!
社会保険とは?
そもそも社会保険とはなんでしょうか?
社会保険は、病気やけが、出産、失業、障害、老齢、死亡などに対して必要な保険給付をおこなう公的な保険を指します。
社会保険は広い意味での社会保険とせまい意味での社会保険の2種類の意味があります。
広い意味での社会保険を広義の社会保険、せまい意味での社会保険を狭義の社会保険と言います。
広義の社会保険には会社員が加入する被用者保険と個人事業主などが加入する一般国民保険に分けることができます。
被用者保険にはさらに狭義の社会保険と労働保険に分けることができます。
ミュージシャンが加入する必要がある社会保険
ここまではどこのサイトでも書いてある一般的な情報です!
さて、これらの内容を踏まえると個人事業主であるミュージシャンが加入する社会保険は、広義の社会保険のなかにある一般国民保険です。
会社員が加入する被用者保険と内容が異なりますので比較してみましょう。
個人事業主と会社員が加入する社会保険の違い
ミュージシャンが加入する一般国民保険は国民健康保険・国民年金保険・介護保険の3つの保険で構成されています。
- 国民健康保険
- 国民年金
- 介護保険(40歳以上)
一方、会社員が加入する被用者保険は健康保険・厚生年金保険・介護保険・雇用保険・労災保険の5つの保険で構成されています。
- 健康保険
- 厚生年金
- 介護保険(40歳以上)
- 雇用保険
- 労災保険
このように、会社員と個人事業主などの自営業では保証される内容が異なり、会社員の方が保証が手厚くなっています。
また、会社員の社会保険は会社と個人で負担が折半されるのに対して、個人事業主は全額個人の負担になります。
会社員は個人の負担が少なくなるのに保証が手厚くてうらやましい!
それではそれぞれの保険に対してどのようが違いがあるのか比較していきましょう。
国民健康保険と健康保険は公的な医療保険
ミュージシャンが加入する国民健康保険と会社員が加入する健康保険は公的な医療保険です。
民間の保険でも医療保険はありますが、日本では民間保険に頼らなくてもレベルの高い医療を全ての国民が受けられるように国民全員が健康保険に加入しています。
病院で保険証を提出することで医療費が1〜3割の支払いで済むのは健康保険のおかげです。
国民健康保険と健康保険の共通点は?
国民健康保険と健康保険で共通していることは3つあります。
- 療養費の給付
- 出産育児一時金
- 高額療養費支給制度
療養費の給付
国民健康保険証、健康保険証があれば病院での医療費の支払いが3割になります。
身近なことなのでイメージしやすいですよね!
若い人はそんなに病院に行かないし、毎回の支払いも数百円から千円程度だから毎月の保険料を考えたらありがたみを感じないかもしれません。
しかし、老後はどうでしょう?
わたしの親を見ていると、内科に整形外科、眼科に歯科と、毎週のように病院に通っています。笑
これは私たちの将来の姿かもしれません。
その際に保険証があるとないとでは負担額が大きく異なってきます。
出産育児一時金
出産時に一律で50万円支払われます。
通常分娩は病気ではないため、療養費の給付で3割負担にはならず全額負担になります。
出産育児一時金が支払われますが、産院によっては出産育児一時金では出産費用を賄うことはできません。
むしろ、出産育児一時金で分娩費用を賄える産院って存在するのかな?
もし、国民健康保険・健康保険に加入していなかったら、出産時に50万円以上の負担があることになります。
高額療養費制度
あまり知られていないけれど、安心につながるのがこの高額療養費制度です。
一ヶ月の医療費(自己負担分)が一定の額を超えた場合、超えた分のお金が健康保険から戻ってくる制度です。
一般的な収入でしたら自己負担の限度額は9万円程度になります。※収入によって限度額は35,400円から252,600円+(治療費の割合に応じて)まで変化します。
治療が何ヶ月にも渡ってしまう場合は毎月限度額分を支払うことになりますが、最近の治療は1ヶ月以内に終わることがほとんどのようです。
知り合いが出産時に帝王切開になって高額療養費制度が適用されたと言っていたよ!
帝王切開だけではなく、国民病とも言われるガン治療も今の医療では手術後数日で退院となることが多いようです。
どちらも50〜100万円以上医療費はかかりますが、高額療養費制度があるので実際の出費は少なくて済みますので安心して医療を受けることができます。
国民健康保険と健康保険の違いは?
国民健康保険と健康保険では異なる部分が5つあります。
- 保険者
- 出産手当金
- 傷病手当金
- 保険料の算出方法
- 家族が増えた時の保険料
保険者
保険料を徴収したり、保険金を支払ったりするところを保険者と言います。
国民健康保険はお住まいの区市町村、健康保険は勤務先が所属する健康保険団体が保険者になります。
出産手当金と傷病手当金
出産または怪我や病気で会社を休んだ時に支払われるものです。
出産手当金と傷病手当金は健康保険特有のものでミュージシャンが加入する国民健康保険にはありません。
ここからはわたしの個人の考えですが、これらが国民健康保険にないのは保険者の違いにあるのではないかと思います。
健康保険では勤務先が所属する健康保険団体が保険者になります。
つまり、会社が健康保険を提供しているので、会社を休んで給料をもらえなかった分は保険金を支払うというのは納得できます。
しかし、国民健康保険の保険者は区市町村であり、国民健康保険に入るのはミュージシャンのような個人事業主をはじめとした自営業者です。
会社が会社員に出産手当金と傷病手当金を用意しているわけですから、自営業者は自分で備えておく必要がありそうですね!
保険料の算出方法
国民健康保険は確定申告で計算した前年の課税所得に対して今年の保険料が決まってきます。
健康保険では4〜6月までの給料(手当ても含む)に対して9月から来年の8月までの保険料が決まってきます。
自営業者は一年の課税所得で、会社員は4〜6月の収入で保険料が決まるんだね!
家族が増えたときの保険料
国民健康保険には扶養という概念がないため、家族が増えたら増えた分だけ保険料は上がります。
うちもこどもが生まれたのでその分保険料が上がっています!泣
会社員だったら増えないのにー、うらやましい!
国民年金と厚生年金は公的な年金保険
「国民年金って年取った時にもらえるやつでしょー?」というのは合っているし間違ってもいます!
「年金の受給額は年々減っているって聞くし、損するなら払いたくない」という気持ちはよーくわかります!
国民年金の加入は義務なので払いましょう!
というのは簡単ですが、そうではなくてきちんと理解して納得払った方が気持ちがいいと思うので説明します!
国民年金とは
国民年金は一定額の保険料を納めることにより、老齢、障害、死亡によって、その人や家族の生活が脅かされないように保障する社会保障制度のひとつです。
内容は①老齢年金、②障害年金、③遺族年金の3種類です。
「年取った時にもらえる」というのは①の老齢年金のことです!
国民年金保険料は?
令和5年度の国民年金保険料は月額16,520円です。
この金額は年齢や職業、収入に関わらず一律です。
年金保険料の納付が難しい場合には免除制度や納付猶予制度があります。
また、学生には学生納付特例制度があります。
老齢年金
国民年金というと老齢年金のイメージという人も多いのではないでしょうか?
テレビやニュースで年金保険料の引き上げと同時に受給年齢の引き上げや受給額の引き下げが話題になるので、損をするのではないかと心配している人も多いのではないでしょうか?
現在の年金保険料は月額16,520円。
20歳から60歳までの40年間払うと65歳から毎年795,000円受給できます。
20歳から60歳まで40年間の年金保険料の総額は7,929,600円ですので、約10年で元を取ることができます。
75歳まで生きていたら元が取れるね!
日本人の平均寿命はどんどん伸びていて、男性が81.25歳、女性が87.32歳ですので、平均的な人は元がじゅうぶん取れる計算になります。
もちろん、若いうちになくなってしまったら老齢年金では元が取れないので損をします。
国民年金の老齢年金のすごいところは終身年金であることです。
民間の年金保険は受給期間が制限されている場合が多く、これを終身年金にすると掛け金がかなり高くなってしまいます。
長生きをした時に受給期間の上限がなく年金が受け取れるのは生活の安心につながります。
では、若いうちになくなってしまった場合は損をするだけなのでしょうか?
障害年金
病気や怪我で障害認定を受けたときは障害年金を受け取ることができます。
障害等級とこどもの数により受給額は異なります。
遺族年金
あなたに18歳以下のお子さんがいた場合、あなたがなくなった時に遺族年金を受け取ることができます。(子供が1人の場合は月額85,308円、2人の場合は104,367円)
国民年金だけだとこどもがいない場合は遺族年金を受け取ることができません。厚生年金に加入していればこどもがいなくても遺族年金が受け取れます。
国民年金と厚生年金の違い
会社員は国民年金に加えて厚生年金にも加入します。
国民年金の年金額に加えて厚生年金の年金額が加わりますので受給額が多くなります。
また、国民年金はこどもに対する給付はありますが、配偶者に対して給付はありません。
国民年金はほとんどの国民が得をするシステム
国民年金は平均寿命から考えると、老齢年金だけでも支払保険料よりも受給額の方が高くなるので得をするシステムです。
それだけではなく、こどもがいる人や子どもが欲しいと思っている家庭にとっては優良な保険機能があります。
民間の保険で同じ内容のものを作ると月額16,520円では賄えません。
しかし、いくら国民年金がいいシステムだからと言ってもそれだけで将来の生活費が賄えるわけではありませんので、貯金・投資・民間保険や国民年金基金・付加年金なども検討しましょう!
もし、年金保険料を滞納しているときに障害を負ってしまったり死亡してしまっても、遺族年金や障害年金を受け取ることはできませんが、納付猶予や免除の手続きをしていたら万が一の時でも保険金を受け取ることができます。
年金保険料の納付が難しい場合には免除制度や納付猶予制度があります。
また、学生には学生納付特例制度がありますので支払いが難しい場合は是非検討してください。
介護保険
介護保険料は40歳になると国民健康保険料とともに支払います。
納付金額は課税所得により異なります。
40歳以上の人が介護が必要になった時に給付を受けることができます。
雇用保険
雇用されている人が職を失った時に受けることができる保険が雇用保険であり、個人事業主であるミュージシャンは雇用保険にはいることはできません。
雇用されていないからね!
労災保険
個人事業主は労災保険に加入できません。
しかし、2021年4月1日からミュージシャンをはじめとする芸能従事者は任意で労災保険にはいることができるようになりました。
民間保険と比べてかなり良心的な料金設定で加入できますので検討してみるのもいいでしょう。
国民健康保険や国民年金を支払わないとどうなる?
まず前提に、国民健康保険と国民年金の加入は国民の義務です。
任意ではないので入らなきゃいけないと決まっています。
そうでなくても民間保険では実現できない保険内容で、ここまで長々と説明してきた通り全ての国民が安心して暮らせるように考えられたいいシステムだと思います。
それでも、支払いができないこともあるでしょう。
そのときは必ず納付猶予・免除の手続きをしてください。
きちんと手続きをすることで、支払いをしなくても万が一の時には保証してもらえます。
1番大変なのは支払いをせず保証がなくなったのに、督促状が届いている状態です。
「支払いをしなくちゃ」という精神的なストレスがあった上に、もしもの時に給付を受けることができなくなります。
督促が続くと最終的には財産の差し押さえになることもあります。
国民年金は2年以上滞納すると保険料を追納することができなくなり、将来受け取る年金額が減ってしまいます。
手続きをしておけば10年以内であれば保険料の追納をすることができ、将来受け取る年金額も減ることはありません。
国民健康保険は地域差がありますが、数ヶ月滞納すると短い期限の健康保険証に切り替えられます。
それでも滞納が続くと保険証が停止されます。
ミュージシャンの社会保険は支払い総額以上の価値がある
ミュージシャンが加入する国民健康保険と国民年金は支払いに見合った給付を受けることができるだけではなく、万が一の時に備えた保険機能があります。
支払いが難しい人は免除・納付猶予の手続きをすることで保険機能を損なうことなく支払いに余裕を持つことができます。
しかし、社会保険だけで将来に備えることは不可能ですので、貯金・投資・保険で将来に備えましょう!
▼将来に備えるにはこちらの本もおすすめです!