あなたはもう開業届を出した?開業届を提出するメリット・デメリットを解説
ミュージシャンをはじめとするフリーランス(個人事業主)のみなさんは開業届を知っていますか?
青色申告をしている人は開業届を提出する必要があるのでご存知かと思いますが、意外と知らない人も多いのではないでしょうか?
わたし自身も開業届の存在を知ったのはミュージシャンとして生計が立てられるようになってから3年目。
その時に開業届を提出しました。
自分自身が開業届を出したことで得られたメリットが多いので、ぜひ多くのミュージシャンに知ってもらいたいと思っています。
- ミュージシャンになろうと決めたとき
- 大学・専門学校を卒業したとき
- 一人暮らしを始めたとき
- 結婚をしたとき
- こどもが生まれたとき
- 節税を考えるようになったとき
これらに当たる人にはぜひ読んでもらいたいです!
開業届とは?
フリーランス(個人事業主)は事業を始めた時に開業届を提出する義務があります。
開業届は所得税法で定められている書類であり、開業後1ヶ月以内に提出することが推奨されています。
しかし、開業届を提出せずにいてもペナルティがないことから、そのまま営業をしているミュージシャンが多いのも事実です。
「みんな提出してないならわたしも提出しなくてもいいか!」と思わず、ぜひ読み進めて欲しいです。
開業届のメリット7つ
開業届と聞くと難しいイメージが先行してしまうかもしれませんが、実際にやってみると拍子抜けするほど簡単な上に得られるメリットが多くペナルティもありません。
メリットは大きく分けて2つ
- 節税ができる
- 社会的信用が上がる
フリーランスには節税できる手段がたくさんあり、会社員にはないメリットです。
また、会社員に比べてフリーランスは家を借りたり、銀行口座やクレジットカードを作ったりするのがむずかしいです。
これは社会的信用の差にあるのですが、開業届を提出することでこれらが通りやすくなります。
開業届を提出することによって会社員にないメリットを活かすことができたうえに、会社員に劣っているデメリットを克服できるようになるのです。
それではどのようなメリットがあるのかひとつづつ説明していきましょう!
青色申告ができる(節税ができる)
確定申告には白色申告と青色申告という2つの方法があります。
青色申告を行うと青色申告特別控除という最大65万円の控除を受けられるようになります。
青色申告をするためには「青色申告承認申請書」という書類を提出する必要があるのですが、これを提出するには開業届を提出している必要があります。
青色申告承認申請書を提出したからと言って必ず青色申告をしなければいけないわけでなく、必要がなくなった場合には手続きなしで白色申告に戻すことが可能です。
複式簿記が大変であきらめちゃったり、青色申告をする必要がないほど売り上げが落ちてしまったら白色に変えちゃっても大丈夫!
ですので、開業届と青色申告承認申請書は一緒に提出しておくといいでしょう。
経費にするレシートを65万円分かき集めるのは大変だけど、「開業届」と「青色申告承認申請書」を出すだけでそれ以上の効果があるのはすごいよね!
家族への給与を経費にできる
節税は青色申告特別控除の65万円だけではありません。
青色申告にすると家族への給与を経費にすることができます。
- 青色申告を行う事業主と生計を1つにする配偶者や親族であること
- 12月31日時点で15歳以上であること
- 1年間を通じて6ヶ月を超える期間働いていること
- 「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署に提出していること
などいくつか条件があります。
白色申告では家族への給与の支払いは認められていません。
家族に仕事を手伝ってもらっている場合は収入を分散することができるので、大幅な節税が可能です。
演奏の仕事は手伝ってもらえなくても請求書発行やスケジュール管理などのバックヤード業務は手伝ってもらえるようになるので頼もしいですよね!
赤字を最大3年間繰り越せる
青色申告にすることで、赤字を繰り越すことができます。
開業当初から順風満帆ならそれが1番ですが、最初はうまくいってなくても2年目・3年目で急激に軌道に乗ることも考えられます。
仕事の少ないうちから青色申告にしておくことで、急激に軌道に乗った時に過去の赤字を補填でき、その年の節税につながります。
30万円までの備品は減価償却しなくいい
白色申告の場合、10万円を超える備品は減価償却と言って数年にわたって経費にする必要があります。
しかし、青色申告にすることで30万円までの備品の減価償却の必要がなくなります。
例えば、年末になって「このままだとたくさんの納税が必要になってしまう!」となっても備品を購入することで税金を抑えることができます。
10万円までの備品となると何にしようか頭を悩ませますが、30万円までだったら業務に必要なパソコンやソフト、マイクなどの録音機材、楽器などいろいろな選択肢ができますね!
屋号付きの銀行口座が作れる
屋号というのは仕事をするときの通称のようなものです。
例えば〇〇商店や△△営業所などが考えられるでしょう。
ミュージシャンでいう屋号というのは考えにくいかもしれませんが、例えば音楽教室をメインに仕事をしているのであれば□□音楽教室なども屋号になります。
ミュージシャンは個人名で活動している人がほとんどなので振り込み口座が個人のものであっても特に不便はほとんどないでしょう。
しかし、音楽教室の場合は生徒さんに「個人の口座に振り込んで本当に大丈夫なのかな?」と思われる可能性があります。
開業届に屋号を記入していれば、銀行で屋号付き口座を作ることが可能です。
本格的に事業を展開する際は屋号つき口座を利用して信用をあげることが重要になるでしょう。
保育園に就労証明書を提出できる
保育園の入園資料集めはフリーランスにとって結構大変です。
わたしたち夫婦(夫婦共にフリーランスミュージシャンをしています。)の場合、わたしが開業届を提出済みだったのですが、夫は出していませんでした。
そのため就業を証明する資料に大きな差が出ました。
- 就業証明書
- 就業証明書
- 最近3ヶ月の就業内容
- 最近発行した請求書数枚のコピー
- 就業内容について電話確認
住んでいる地域や就業内容によって差はあると思いますが、わが家の場合このような差がありました。
収入は圧倒的に夫のほうが多いのにもかかわらず、開業届を出しているだけで社会的信用が上がるんだなと感じた出来事でした。
個人事業主として自覚できる
「フリーランスになる!」と強い意思を持つために開業届を提出する人もいるそうです。
「ミュージシャンになる!」と思ったら開業届を出すよりも練習をする人の方が多いと思います。
もちろんそれが1番大切ですし、技術がなければ仕事はできません。
しかし、ミュージシャンもフリーランスの働き方のひとつです。
開業届を出すことで、気持ちを新たに社会人としての自覚を持つことができるでしょう。
開業届のデメリット(注意点)3つ
開業届を提出することでのメリットはとても多く、ぜひ多くのミュージシャンに開業届を出してもらいたいと思うのですが、いくつか注意点があります。
この項目ではそれについて解説しようと思います!
事業所得でなければ提出する必要はない
開業届の提出が必要なのは
- 不動産所得
- 山林所得
- 事業所得
が発生した場合です。
ミュージシャンをはじめとするフリーランスの場合は主に事業所得が発生した場合に開業届が必要になります。
アルバイトや会社員などの本業をしながらミュージシャンをして収入を得ている場合は副業とみなされて事業所得ではなくて雑所得となります。
しかし、事業所得と雑所得はとてもまぎらわしく、どちらとも取れる場合が多いです。
その事業が反復継続を前提とした事業でないと事業所得として認められません。
ある程度長い期間活動をしているミュージシャンであれば事業所得としやすいですが、駆け出しのミュージシャンの場合それらの仕事が反復継続するかどうかわからないので判断しにくいのです。
わたしのミュージシャン経験から、ミュージシャンとして生計を立てられるようであれば開業届を出していなくても事業所得とし、ミュージシャンだけでは生計を建てられなかったとしても開業届を提出しているのであれば事業所得として良いのではないかと思います。
しかし、これはとても難しい問題です。
過去に大学教授が出版したほんの印税を事業所得とできなかった判例もあるようですので、税理士さんに相談できるような状況であれば相談しても良いと思います。
雑所得よりも事業所得の方が税制上のメリットが大きいです。
ミュージシャンとして生きていく!と決意があれば事業所得としましょう!
駆け出しミュージシャン時代に税理士さんに「ミュージシャンが本業なの?」と聞かれて、「ミュージシャンとして生きてます!」と言ったら「じゃあ事業所得にしてね!」と言われた過去があります。税理士さんのなかには「ミュージシャン?雑所得でしょ。」という人も多いなか、その税理士さんは音楽に理解のあるとても素敵な人だったんだなと思います!
扶養に入っている人は注意が必要
配偶者や親の扶養に入っている人は開業届を出す前にそれぞれの健康保険組合に確認をしましょう。
アルバイトでもたびたび問題になる130万円の壁と言われるもので、被扶養者の収入がある程度あると扶養から外れる可能性があります。
それだけではなく、健康保険組合によっては「自営業者は扶養に入れない」と定めているところもあるようです。
扶養から外れた場合は自分で国民健康保険に入る必要が出てきます。
退職と開業届提出のタイミングはよく検討しよう
退職をして失業保険を受け取ろうと考えている人は開業届の提出のタイミングに注意しましょう。
失業保険を受け取る条件に「再就職の意思と能力があること」とあるのですが、開業届を出していると再就職の意思がないと判断されて失業保険を受け取れません。
なお、雇用保険の中には失業保険の他に「再就職手当」というものがあります。
再就職手当を受け取れる条件の中に「7日間の待機期間満了後に、就職または事業を開始したこと」とあるので、退職してから7日以降に事業をはじめた(開業届を提出した)場合は再就職手当は給付条件に当てはまります。
いつ開業届を出すべき?
開業届を出すのに迷ったら、年間の収入が20万円を超えた時を基準にすると良いでしょう。
開業届を出さずに事業所得ではなく雑所得としている場合、年間の収入が20万円を超えると確定申告の必要が出てきます。
雑所得よりも事業所得の方が税制上のメリットが大きいので確定申告が必要となる年間20万円を基準とすると良いでしょう。
また、メリットでも挙げた通り、開業届を出すと個人自業主としての自覚が生まれます。
年間20万円を稼げた人は今後もその金額で留まるということはないと思います!
ちょっと前からミュージシャンとして収入を得ていたからと言って過去にさかのぼって提出する必要はありません。
いままでが副業状態であり、これからは本業として事業収入にしよう!と思った時を開業日にすれば大丈夫です!
副業or本業は自分の意思を変えるだけだよ!
収入がない状態でも開業届を出すべき?
「ミュージシャンで生計を立てる!」と決めた時点で開業届を出すのも問題ありません。
ミュージシャンに限らず、事業が絶対にうまくいくという保証はどこにもないので、全く収入がない状態で開業届を出すのも普通のことです。
むしろ、開業届を出して青色申告にすることで3年間赤字を繰り越すことができますので、収入がないうちから開業届を出して青色申告をすることで節税にもつながります。
開業届の出し方
「ミュージシャンになる!フリーランスになる!」と決めたら開業届を出しましょう!
開業届は開業してから1ヶ月以内に提出することになっていますので、過去1ヶ月以内の自分が決めた任意の日を開業日として問題ありません。
開業届はA4用紙1枚です。
必要事項を記入して郵送または管轄の税務署に持参します。
多少めんどうですが、個人的には持参するのがおすすめです。
理由は以下の通りです。
- 確定申告時と違って税務署はいつも空いている。
- 控えをすぐにもらえるのですぐに事業用銀行口座や事業用クレジットカードを作ることができる。
- 不明点や質問をすれば教えてもらえる。
- 郵送して不備があったらまた返送して…というリスクを避けられる。
- なんとなく大人になった気がする!笑
また、開業届と同時に青色申告承認申請書も提出しておきましょう。
青色申告承認申請書は青色申告にするために必要な書類ですが、提出したからと言って絶対に青色申告にしなければいけないわけではありません。
難しいと感じたら手続きなしで白色申告に戻すことが可能です。
https://life-of-music.com/tax-tell/青色申告は多少難しくなりますが、メリットがとても多い制度です。
開業後いつでも青色申告に切り替えることができるように青色申告承認申請書は開業届と一緒に提出しておくことをおすすめします。
おすすめの開業届作成ソフト
マネーフォワードクラウド開業届では質問に答えるだけでかんたんに開業届と青色申告承認申請書を作ることができます。
「ここは記入するのかな?」「これはどういう意味だろう?」と手書きだと疑問がたくさん浮かんでくるのですが、ソフトではそれがないのですんなり開業届を作れます。
マネーフォワードクラウド開業届は完全無料で利用できます。
またその後に有料サービスに勝手に移行されることもありませんので、ぜひ利用してくださいね!
個人事業主の開業手続きをラクに!【マネーフォワード クラウド開業届】まとめ
ペナルティはありませんが、開業届の提出はフリーランス(個人事業主)の義務です。
それでなくても開業届を提出することで得られるメリットはとても多いです。
開業届を提出して気持ちを新たに事業を頑張ってくださいね!
ではでは〜!